おむつ代は、条件を満たすと医療費控除の対象になります。医療費控除とは、支払った医療費をもとに、税金の負担を軽くする仕組みです。
「何を用意して、どこへ相談すればよいか」を、4つの疑問に分けて説明します。
まずは、おむつ代の領収書を、支払った年ごとに分けて保管するところから始めましょう。
ここでは主に、2024年分以降のおむつ代を初めて申告する方へ説明します。「2025年分」は、2025年に支払った分という意味です。制度の確認日:2026年11月5日。「2026年版」は説明の確認時点を示しています。
自分のおむつ代も対象になる?
おむつを買った人が、誰でも対象になるわけではありません。基本となるのは、医師の診断で次のことが認められる場合です。
- 病気やけがで、おおむね6か月以上にわたり寝たきりの状態にある。
- その病気やけがの治療を続ける必要がある。
- おむつを使う必要がある。
期間や状態は家族だけで判断せず、医療機関や市区町村に確認しましょう。要介護認定がある、尿もれがある、という理由だけでは決まりません。
おむつを使う必要があることを、医師が書面で証明するのが「おむつ使用証明書」です。
要介護認定は、介護が必要な程度を市区町村が認定することです。認定を受けている方は、認定のために医師が書いた書類の内容などが条件に合えば、市区町村の確認書などを代わりに使えます。2024年分以降は、初めての申告でも使える場合があります。
尿とりパッドも、おむつ代の医療費控除の条件を満たす場合は対象になります。
自分と生活費などを共にする家族のために払った分も、対象になる場合があります。
例:離れて暮らす母親が、子からの仕送りで生活し、その子がおむつ代も支払った場合です。条件を満たせば、支払った子の医療費控除の対象になります。誰が実際に支払ったかを整理して税務署へ相談しましょう。
出典:国税庁 No.1122、改正の案内、厚生労働省Q&A 問1・6(PDF)、No.1120、別居の母親の費用を子が払った場合
何を用意すればいい?
主に、次のものをそろえます。
支払った金額が分かる領収書
おむつ代のほか、対象になる診療費や薬代などの領収書も集めます。
例:対象のおむつ1,500円と洗剤500円を一緒に買ったら、おむつ代として集計するのは1,500円です。洗剤代は、おむつ代の合計に足しません。
おむつ代の領収書は、使う人の氏名と、成人用のおむつ代であることが分かるものを用意します。お店では「使う人の氏名は○○です。成人用のおむつ代と分かる領収書をお願いします」と伝えます。記載のないレシートが手元にある場合は、購入先や税務署へ相談してください。
おむつが必要だったことを示す書類
医師の「おむつ使用証明書」、または代わりに使える市区町村の確認書などです。両方を必ず用意する、という意味ではありません。どちらが使えるかは、次の章の窓口で確認します。
領収書は「いくら払ったか」、証明書類は「おむつが必要だったこと」を示します。
申告する人の所得が分かる資料など
源泉徴収票は、1年間の収入や、そこから引かれた税金などが書かれた書類です。例えば会社員の方は、勤務先からもらう「給与所得の源泉徴収票」を用意します。公的年金を受け取っている方は「公的年金等の源泉徴収票」などを確認します。
本人確認に必要なものなどは、税務署や申告画面の案内で確認してください。
領収書は、原則として申告書の提出期限などから5年間保管します。例えば、領収書を税務署へ送らずに申告した場合も、自宅で保管しておきます。後日、確認のために見せるよう求められることがあります。
証明書類も、必要な手続きをすれば提出を省略できる場合があります。ただし、先に書類を取り寄せ、提出しない場合も保管します。具体的な方法は、下の詳しい記事で説明しています。
特別養護老人ホームなどで、おむつ代が施設サービス費に含まれる場合は、領収証にある「医療費控除の対象額」を確認します。施設へは「この金額におむつ代も入っていますか?」と尋ねます。すでに入っているおむつ代を、別にもう一度足さないようにします。
出典:国税庁の様式例・領収書の記載事項(PDF)、No.1119 Q&A 問2、No.1125
どこへ相談して、どう申告する?
最初に、使える証明書類を相談します
要介護認定を受けている方は、市区町村の介護保険担当へ。次は2025年に支払った場合の質問例です。年はご自身の場合に置き換えてください。
「2025年に払ったおむつ代を、初めて医療費控除で申告します。医師の証明書の代わりに使える確認書などはありますか?」
要介護認定がない方や、確認書などを使えない方は、治療を受けている医療機関へ。
「2025年に払ったおむつ代を申告したいです。おむつ使用証明書で、いつからいつまでの使用を証明できるかと、発行の手順・料金を教えてください。」
対象になる費用や、家族の誰が申告するかで迷ったときは、税務署などの相談窓口に確認します。
申告までの流れは4ステップ
- 領収書を、支払った年ごとに分ける
例えば「2025年分」と書いた封筒に、その年に払った領収書をまとめます。おむつ代のほか、対象になる医療費も一緒に整理します。
- 証明書類をそろえる
医療機関や市区町村に、申告する年を伝えます。その書類で、いつからいつまでのおむつ使用を証明・確認できるかも尋ねます。
- 医療費控除の明細書を作る
明細書は「誰の分を、どこへ、いくら支払ったか」をまとめる書類です。例えば「使った人の氏名/買ったお店/対象のおむつ代の年間合計3万円」のようにメモすると、書き写しやすくなります。保険会社から受け取ったお金などがあれば、それもメモします。
- 確定申告書と明細書を提出する
確定申告は、1年分の所得や税金を計算し、税務署へ申告書を出す手続きです。e-Taxの公式案内から、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」に進めます。画面の案内に沿って入力し、インターネットで送る方法と、紙で提出する方法があります。
スマホやパソコンでの申告に不安がある方は、税務署へ相談方法や来署の予約について確認してください。
通常、2026年中に払った分は、翌年以降に2026年分として申告します。申告できる時期や期限は、人によって異なります。
以前の分を忘れていたときは、税務署へ「2024年分はまだ申告していません」「申告しましたが、おむつ代を入れ忘れました」など、支払った年と、すでに申告したかどうかを伝えてください。
出典:国税庁 No.1120、税についての相談窓口、e-Tax 個人向け案内
おむつ代が全部戻ってくるの?
おむつ代が、そのまま全額戻る制度ではありません。税金を計算するもとになる所得から、一定の金額を差し引く仕組みです。
おむつ代だけでなく、その年に払った対象医療費の合計で考えます。
例えば、入院したときに保険会社からお金(入院給付金)を受け取ったら、その入院費から差し引きます。受け取ったお金が入院費を超えても、余った分を別のおむつ代から引くことはありません。
自治体から、おむつの購入費の一部を助けるお金(助成金)を受け取った場合も、そのおむつ代から引く金額を確認します。
保険金などを差し引いた後の医療費から、通常は10万円を引いて控除額を計算します。
計算に使う「総所得金額等」は、税金の計算のためにまとめた所得の金額です。給与の額面年収や手取り額とは違います。例えば、給与の年収が300万円でも、この金額も300万円とは限りません。分からないときは、源泉徴収票などを手元に税務署へ相談できます。
たとえば、次のような場合
- 総所得金額等:300万円
- 対象医療費の合計:20万円(入院費10万円+対象のおむつ代10万円)
- その医療費を補う保険金など:2万円
例:入院したときに、保険会社から受け取ったお金(入院給付金)
この例では、入院費10万円のうち、保険会社から受け取った2万円を差し引きます。
20万円 − 2万円 − 10万円 = 控除額8万円
この8万円は、税金を計算する前の所得から引く金額です。8万円が振り込まれる、という意味ではありません。
所得によっては、医療費が10万円以下でも対象になります
「総所得金額等」が200万円未満なら、10万円の代わりに、その5%を引きます。例:総所得金額等が100万円なら、引く金額は5万円(100万円×5%)です。そのため、医療費が10万円以下でも対象になる場合があります。
計算結果がマイナスなら控除額は0円です。控除額の上限は200万円です。
実際に戻る所得税は、所得や税率、ほかの控除、すでに納めた税額などで変わります。所得税を納めていなければ、戻る所得税はありません。住民税への影響は、市区町村の税担当へ確認してください。
出典:国税庁 No.1120、No.2030、給与の収入と所得、公的年金の収入と所得
まずは「何年分か」「誰が支払ったか」をメモし、領収書をまとめてみましょう。個別に対象になるかどうかは、そのメモと書類を示して税務署などへ確認してください。
認定期間の細かな条件、証明書の提出・保存、施設費の扱い、過去年分や申告済みの年分の手続きは、次の記事で詳しく説明しています。

